第77章

菊地優子は、どこか遠い目をしてぽつりと言った。

「いまでも覚えてる。仲介が契約書を説明してくれてる間、ずっと手のひらが汗でびしょびしょだったの」

――説明が終わったら、もう引き延ばす理由はない。

菊地優子は「電話が……」と席を外すふりをして、端でスマホを操作し、闇金から120万を無理やり借りた。

「その頃の闇金って、借りるだけなら簡単だった。でも返せないとなったら……ほんとに平気で“切る”んだよ」

「でも、そんなの構ってられなかった。ギリギリのところで、最後の最後に振り込んだの」

その瞬間。

仲介の態度が、がらりと変わった。へりくだって、やたらと頭を下げてくる。

あのグオルジ...

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